『ボナンザVS勝負脳 ――最強将棋ソフトは人間を超えるか』 保木邦仁・渡辺明(角川oneテーマ21)

 3年前に行われたボナンザVS渡辺竜王の公開対局。
 この本はその渡辺竜王とボナンザの開発者である保木氏の対談を含む、共著です。
 発行直後に読んだのですが、今回再読して、あらためて面白さを感じました。

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 第一章 ボナンザ誕生            保木邦仁
 第二章 コンピュータとの対決        渡辺明
 対談  保木邦仁×渡辺明
 第三章 コンピュータ将棋の新たな可能性 保木邦仁
 第四章 プロ棋士はこう考える        渡辺明
 終章  科学的思考とは?          保木邦仁
                    (2007年8月10日 初版発行)

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 ボナンザの特徴は、それまでの将棋ソフトが「選択的探索」を採っていたのに対し、「全幅探索」を採用している点。「選択的探索」が主流なのは、しらみつぶしに考えるより、経験や知識をベースに候補手を絞り込んで考えるほうが、人間の直感になじむからでしょう。
 ただし、これは製作者の将棋の力量が問われる方法で、初心者に近い保木氏には難しく、仕方なく(!?)「全幅選択」で開発を進めたようです。でも、人間の直感に反する「全幅探索」ソフトであるボナンザが「人間のような指し方をする」と評されるのが興味深いところです。
 興味深いといえば、保木氏の以下のような視点もなかなか面白いです。

 おもしろいというか、残念だったのは、選択的探索を用い、時間をかけて、多分プロ棋士など実際に将棋を熟知した熟練者の助言を得ながら組まれたであろうその他のソフトとはまったく違い手法を用いているにもかかわらず、皆と同じレベルにしかならなかったという点だ。まったく弱いか、あるいは群を抜いて強いか、どちらかになりそうなものだが、そうはならなかった。「そんなものか」と思ったものだ。

 将棋からある程度、距離を置いていた人のほうが冷静に見られるのかもしれません。
 ボナンザそのものについでだけでなく、この先、新規参入するソフトを見越した視点で、ボナンザの意義を分かりやすく述べている点はすばらしいです。

 一方の渡辺竜王には、すでに次世代の将棋界を背負っていく気概が感じられますが、その中には進化を続ける将棋ソフトとどのように向き合っていくのか、という問題も当然、視野に入っているでしょう。
 だからこそ、この対決のためにあれだけの準備をしたはず。この事前準備の周到さには、渡辺竜王の勝負師としての一面が現れているように思います。それにも関わらず、渡辺竜王が書いているように「接戦になりすぎた」面もありますが、見所が多く、内容の濃い将棋でした。
 これでは第二戦以降が大変ですが(!?)、ソフトがどこまで進化するのか? ソフトの進化が人間の思考法にどのように影響するのか? など、興味はつきないです。


 保木邦仁さんのボナンザのホームページ
   http://www.geocities.jp/bonanza_shogi/

 渡辺明竜王のブログ
   http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira

    大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その1(対局準備)
     http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/148732e1b586255f0d0640074c86a54b
    大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その2(当日編)
     http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/44150b5b5d9e8d6d04a84292a13ce277



ボナンザVS勝負脳—最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)
角川書店
保木 邦仁

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